Books 《 渡部の本 》

「AI=知」への逆襲
ー日本文化論の視点ー

渡部信一著 大修館書店 1,760円 2023

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 本書で着目するのは、岡倉天心『茶の本』(1906年(明治39年)発刊)、柳田国男『遠野物語』(1910年(明治43年)発刊)、そして九鬼周造『「いきの構造」』(1930年(昭和5年)発刊)である。ここで私が重要であると考えるのは、この3冊の著者が共通して「西洋・近代」のこと(例えば、それが合理的であり、効率的であり、便利であること)を十分に理解している知識人だったことである。感情的に「西洋化・近代化」を否定したり、かたくなに「日本の伝統文化」だけを守りその他を排除しようとしたのではない。実際に自分自身も当時の近代化した社会の中で官僚や大学教授などの高い地位を確立した上で、あえてそれまで日本が積み重ねてきた「文化」に着目し、検討しているのである。つまり、これらの著書は、近代化・西洋化が急速に進む時代背景の中で「人間にとって何が大切か?」について「日本文化」というひとつの視点から深く考え抜いた著作なのである。
 私は、このような「日本文化論」を検討の出発点とすることにより、今の私たちにとっても「何か大切なもの」が見えてくるかもしれない、そしてAI社会における「知」のあり方を見いだすことができるかもしれない、と考えたのである。

(「はじめに」より)

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