小嶋秀樹 | 研究室
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Miyagino とは
Miyagino

Miyagino(みやぎーの)は,ブレットボード上に構築された Arduino 準拠の組込みコンピュータです.ブレッドボードの右半分に,マイクロプロセッサや USB-シリアル変換モジュールなどを配置してあります,空いている左半分は,ユーザが機能拡張に利用することができます.モータ,ライト,スイッチ,センサなどを接続することで,光・音・動きを使ったインタラクティブな情報ガジェットを試作することができます.

【主な仕様(Miyagino 2.0)】
Miyagino1 complete2

Miyagino には2つの LED があり,右側 (PWR) は電源インジケータとして機能し,左側 (LED) はディジタル入出力 13番ピンに接続されています.スイッチ (RST) は Miyagino をリセット(再起動)するためのものです.

Miyagino schematics

ATmega328P は,プログラムを格納する Flash ROM (32k Bytes),動作パラメタ等を格納する EEPROM (1k Bytes),そして一時的なデータ(変数の値)を格納する RAM (2k Bytes) を内蔵したマイクロプロセッサです.Miyagino ではムカデ型パッケージ (28ピン) のものを使用しています.

Miyagino ATMega328 diagram
Miyagino をつくる

Miyagino は非常にシンプルな組込みコンピュータです.部品代は,USB-シリアル変換モジュール込みで 2000円程度.USB-シリアル変換モジュールなし(スタンドアロン動作)であれば 1000円程度,さらに小さなブレッドボード(またはユニバーサル基板)を使えば 500円程度で製作できます.製作に必要な時間は,手先の器用さにもよりますが,およそ 2〜3時間程度でしょう.

【必要な材料】

小嶋の授業・演習,あるいは小嶋研究室での卒業研究・大学院研究などで Miyagino を使う場合は,最小構成の Miyagino を構築するために必要な部品を,大学あるいは研究室から提供します.それ以外の場合は,下のリストにあげられた部品を調達してください.調達先(ネット通販)としては,たとえば「秋月電子通商(あきづき)」「千石電商(せんごく)」「マルツパーツ館(まるつ)」「共立電子産業(きょーりつ)」などがあります.

Miyagino parts
  1. ブレッドボード:400〜800円.(配線用の穴が多数ある樹脂製の基板.縦 5+5 穴,横 33穴以上.写真にあるように上下に電源用ラインをもつものが望ましい.配線用電線が付属しているものもあり,お得.)
  2. プロセッサ:Atmel ATmega328P-PU:200〜300円.(28ピンのムカデ型)
  3. USB-シリアル変換モジュール:950円.(秋月電子の AE-UM232R を推奨.800円のキットもある.TXD, RXD, DTR, 5V 出力のものであれば,他のモジュールでも代用可能.)
  4. タクトスイッチ:10〜50円.(一過性の押しボタンスイッチ.小型のものが望ましい.)
  5. 水晶発振子 16MHz:50〜100円.(HC-49/S 形状など小型のものが望ましい.)
  6. その他の電子部品:合計で 50〜200円.内訳は,電解コンデンサ:10µF × 1(耐圧 10V 以上).セラミックコンデンサ:22pF(表示は "22")× 2,0.1µF(表示は "104")× 1.抵抗器:10kΩ(茶黒橙[金])× 1,1kΩ(茶黒赤[金])× 4(1/4〜1/8W 程度),LED(発光ダイオード)φ3〜5mm のもの × 2.
  7. 配線用電線:0〜100円.(直径 0.65mm 程度の単線で,色分けされた被服をもつものが望ましい.ブレッドボードに付属している場合もあり.)
Miyagino parts

このほかに,インターネットに接続できる PC(Mac・Linux・Windows のいずれか)と USB 2.0 ケーブル(A / mini-B)が必要です.また工具として,ワイヤストリッパがあると便利ですが,カッタやハサミでも代用できます.先細のペンチがあると,電子部品の足や電線を曲げるのに便利でしょう.また,ブートローダの書き込みには専用ツール AVRISP mkII が必要ですが,小嶋の授業や演習で使うのであれば,あらかじめブートローダを書き込んだ ATmega328P を提供しますので,AVRISP mkII は不要です.卒業研究・大学院研究などで AVRISP mkII が必要であれば,小嶋研究室のものを使うことができます.

【部品の配置と配線】
Miyagino1 illustration

右図(クリックして拡大)のように部品を配置し,配線していきます.図の上段がイラスト図で,下段は各部品を回路図記号に置き換えたものです.以下に,配置・配線上のポイントを説明します.

ブレッドボード上に構築した Miyagino は,下図のように,いくつかの部分から構成されています.プロセッサへの電源は下側の電源供給ラインから供給されます.上側にある電源供給ラインは,プロセッサのアナログ入力部に電源を供給するためのものです.

Miyagino functional blocks

プロセッサの下側にはクロック生成部があり,16MHz のクロック信号をプロセッサに供給します.上側には,左右の LED(左はディジタル出力 13番,右は電源インジケータ)があります.また,プロセッサの右側にはホスト PC との通信(プログラムのアップロードなど)のための USB シリアル変換部があり,抵抗と橙色・緑色の電線でプロセッサと通信します.また,左側にはリセット信号生成部があり,タクトスイッチを押したときや,PC からのアップロードが始まるときに,プロセッサにリセット信号を与えるようになっています.

【配線チェック】

配線が終わったら,回路図・イラスト図・写真などと照らし合わせて,部品の向きや配線に間違いがないか,とくに電源まわり(赤・青の配線)が正しいかどうか,十分に確認してください.

また,以下の箇所(下図参照)は間違えやすいようです.これらについても念入りにチェックしてください.

  Miyagino1 check points

なお,イラスト図でプロセッサの上下に並んでいる青丸は「ディジタル入出力端子」を,赤丸は「アナログ入力端子」を表示するものです.写真のブレッドボードには青丸・赤丸はついていませんが,配線の参考になるので,必要に応じてマジックなどで印をつけるとよいでしょう.

Miyagino1 complete
【電源投入テスト】

それでは USB ケーブルで PC と接続し, Miyagino の電源インジケータ(右側の LED:PWR)が点灯することを確認してください.何か異状があれば,すぐに USB ケーブルを外してください.なお,PC が壊れても小嶋は責任を負えません.

正常に動作すれば,PC にドライバのインストールを要求するダイアログが表示されるでしょう.これで第1段階は終了です.とりあえず USB ケーブルを外して,つぎの段階「Miyagino 開発環境をつくる」に進んでください.

Miyagino 開発環境をつくる

PC 側に Miyagino の開発環境をつくります.Miyagino は Arduino クローンなので,Arduino の開発環境をそのまま使います.まず,USB-シリアル変換モジュールのドライバをインストールします.つぎに,Arduino 開発環境をインストールします.最後に,Miyagino にブートローダを書き込みます.(宮城大学の「デザイン情報演習A」や「ロボティクス」では2番目のステップまで行ないます.自分でゼロから Miyagino を作る人は,最後のステップまで必要です.)

【ドライバのインストール】

Miyagino のプログラムは PC 上で編集・コンパイルされ,USB をとおして Miyagino に書き込まれて,実行されます.PC からは直接 Miyagino は見えません.見えるのは,USB-シリアル変換モジュールに内蔵された FT232R という IC です.この IC を「仮想 COM ポート (Virtual COM Port)」にするためのドライバを PC にインストールします.

【Arduino 開発環境のインストール】

Arduino 開発環境をインストールします.ソースエディタ・コンパイラ・アップローダなどが統合されたアプリケーションです.Arduino 公式ダウンロードページから最新版の開発環境(Arduino 1.0.5)をダウンロードします.やや大きなファイル(数十MB)なので,安定したネット環境でダウンロードしてください.

Arduino 開発環境がインストールできたら,起動してみてください.下図のような画面が現われますので,まず,ターゲットとなる Arduino の種類を Tools > Board の一覧から選択します.Miyagino の場合「Arduino Duemilanove w/ ATmega328」または「Arduino Nano w/ ATmega328」とすればよいでしょう(下図左).つぎに,USB ケーブルで Miyagino を接続し,Miyagino との通信ポートを設定します.Tools > Serial Port から,上記「通信ポート名の確認」で確認したポートを選択してください(下図右).(動作環境によってポート名が変化することがあります.)

Miyagino1 Arduiono1 Miyagino1 Arduiono2

(ブートローダが書き込んである場合)これら設定が完了したら,試しに LED を点滅させる例題プログラム Blink をコンパイル・アップロード・実行してみましょう.まず,File > Examples > 1.Basics > Blink を開くと(下図左).ソースプログラムがエディタ上に表示されます.これをコンパイルしアップロードするには「Upload」アイコンをクリックするだけです.Miyagino は自動的にリセットされ,コンパイルされた実行プログラムが内蔵 Flash に書き込まれ,それが実行されます.

Miyagino1 Arduiono3 Miyagino1 Arduiono4

例題プログラム Blink の場合,Miyagino 左側の LED が1秒ごとに点灯・消灯を繰り返すはずです.うまく行きましたか? プログラムは Miyagino の Flash メモリに書き込まれていますから,USB ケーブルを外してから,もう一度接続すれば,Blink が自動的に実行されます.電池を接続した場合も同様です.

【ブートローダの書き込み】

この作業は,小嶋の授業・演習などで Miyagino を扱う場合は不要です.提供する ATmega328P には,あらかじめ小嶋研究室でブートローダを書き込んであります.

ブートローダとは,Arduino 開発環境からアップロードされたプログラムを受け取り,フラッシュメモリに焼き込み,それを実行するための基本プログラムです.買ってきたばかりの ATmega328P にはブートローダは入っていません.Miyagino として利用するには,専用ツール AVRISP mkII によって AVRブートローダを書き込む必要があります.

まず,AVRISP mkII の6極プラグを,つぎのように Miyagino 上の ATmega328P に接続します.この接続には,適当な配線用電線を使ってください.

つぎに,AVRISP mkII を PC に USB 接続し,また Miyagino 本体も同じ PC に USB 接続します.Arduino 開発環境を起動し,Tools > Board として「Arduino Duemilanove w/ ATmega328」または「Arduino Nano w/ ATmega328」を,また Tools > Serial Port として Miyagino に接続された通信ポートを,そして Tools > Programmer として「AVRISP mkII」を設定した上で,Tools > Burn Bootloader を選択して,ブートローダの書き込みを開始します.

Miyagino1 burning bootloader

通常は数十秒で「Done burning bootloader」とステータスバーに表示され,書き込みが終了します.USB ケーブルを外し,6本の配線用電線を取り除けば,ブートローダ入り Miyagino の完成です.例題プログラム Blink をコンパイル・アップロード・実行してみてください.

つぎのステップへ

これで Miyagino は完成です.Pd から Miyagino を使うには「Miyagino + Pd」のページに進んでください.C で Miyagino をプログラミングして単体動作させるには「Miyagino + C」のページに進んでください.いずれかをマスターしたら,外付けのライト(LED)やモータ,そして各種センサなどを Miyagino に接続する方法が「Miyagino の応用」のページに解説してありますので,参考にしてください.