Infanoid | Keepon | ClayBot
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ロボットをつくる・そだてる

CareBots プロジェクトでは,子どものコミュニケーション発達を解明するためにも,そのモデルを検証・評価するためにも,ロボットが大きな役割を果しています.ロボット上に子どものコミュニケーション能力を〈再現〉すること,ロボットを使って子どものコミュニケーション行動を〈観察〉すること,これら相補的なアプローチをラセン状に往復することで,人間のコミュニケーション能力がどこから来るのか・どのように発達するのかを解き明かしたいと考えています.

写真:Keeponとのアイコンタクト 写真:Infanoidが左手でボールを持っている様子

現在までに〈子ども型ロボット Infanoid〉と〈ぬいぐるみロボット Keepon〉を開発しました.これらロボットの開発コンセプトは『子どもから自発的なコミュニケーション行動を引きだす〈身体〉』です.このコンセプトを具現化した Infanoid・Keepon は,とてもユニークで存在感のあるロボットだといえます.

また,これらロボットの共通部品として開発した電子回路(制御コンピュータ・モータドライバ)やソフトウェアなどを,〈ロボット素材 ClayBot〉として研究・教育目的に活用する試みも進めています.

子ども型ロボット Infanoid (インファノイド)
【子どもサイズのヒューマノイド】

Infanoid(インファノイド)は,3〜4 歳児とほぼ同じ大きさ(座高 480mm)の上半身ヒューマノイド(人間型ロボット)で,29 個のモータと多数のセンサをもっています.手には 5 本の指があり,指さしをしたりオモチャをつかむことができます.

写真:Infanoidの上半身(左向き) 写真:Infanoidの上半身(正面) 写真:Infanoidの上半身(右向き)

頭部には左右の眼があり,その〈視線〉を上下左右にすばやく動かすことができます.それぞれの眼には,周辺視のための広角ビデオカメラ(水平画角 120 度)と中心視のための望遠ビデオカメラ(同 25 度)が装着されています.それらの画像は,コンピュータによって処理され,人間の顔やオモチャを検出・追跡することが可能です.

写真:Infanoidの表情(興味) 写真:Infanoidの表情(驚き) 写真:Infanoidの表情(怒り) 写真:Infanoidの表情(悲しみ)

また,眉毛や上下の唇を動かすことでさまざまな〈表情〉をつくりだします.耳にあたる左右のマイクロフォンから人間の声を聞きとり,その韻律情報(抑揚など)や音韻情報(コトバの断片)を抽出すること,また,それらの情報を音声合成装置に入力することで,いわゆるオウム返しができるようになっています.

【アイコンタクトと共同注意】

Infanoid は,対面した人間とアイコンタクトや共同注意をとることができます.アイコンタクトとは,たがいの眼あるいは顔を同時に見ることです.ビデオカメラの映像から人間の正面顔を検出し,その顔に視線を(あるいは頭部や手も)向けることで実現されています.

共同注意とは,両者が同じ対象を同時に見ることです.ビデオカメラの映像から人間の顔の位置と向きを捉え,その顔の向きに沿って対象(オモチャなど)を探しだし,そこに視線を(あるいは頭部や手も)向けることで実現されています.

写真:Infanoidが人とアイコンタクトしている様子 写真:Infanoidが人と一緒にぬいぐるみを見ている様子
ぬいぐるみロボット Keepon (きーぽん)
【シンプルな身体】

Keepon(きーぽん)は黄色いダンゴ型の身体(高さ 120mm・直径 80mm)をもっています.上側のダンゴは頭にあたり,左右の眼(広角ビデオカメラ)と鼻(じつはマイクロフォン)が装着され,Infanoid とほぼ同じ視聴覚機能を発揮します.下側のダンゴは,あえていえば腹にあたります.

写真:Keeponの外観と内部構造 写真:Keeponのやわらかな身体を手で揉んでいる様子

Keepon の身体はシリコンゴムで一体成形されています.モータや電子回路などは黒い円柱型の容器に格納され,そこからワイヤをとおしてマリオネットのように身体を動かすようになっています.身体内部には骨格・ビデオカメラ・マイクロフォンがあるだけで,頭や腹を手で触るとやわらかく変形するため,子どもや赤ちゃんにも安全です.

【シンプルな動き】

このシンプルな身体には,4 つの動作軸──前後屈(うなずき:±40度)・水平回転(くびふり:±180度)・左右傾動(くびかしげ:±25度)・上下伸縮(ポンポン:15mm)──があります.これらの動作によって,シリコンゴムでできた身体はやわらかく変形します.

写真:Keeponの前後屈の動き(うなずき) 写真:Keeponの水平回転の動き(くびふり) 写真:Keeponの左右傾動の動き(くびかしげ) 写真:Keeponの上下伸縮の動き(ポンポン)

これら 4 つの動作軸によって,〈注意の表出〉と〈情動の表出〉に対応する2種類の身体動作をつくりだします.

図:Keeponが上下左右に顔の向きを変える様子 図:Keeponが身体を左右に揺らしたり上下に伸縮させる様子

Keepon にできるのは,これら 2 種類の身体動作を,画像処理による自動運転あるいは人間による遠隔操作によって実行することだけです.それゆえに,Keepon が何を知覚しどのように感じているのか,赤ちゃんや子どもから見てもわかりやすく,さまざまな自発的コミュニケーション行動を引きだすことができます.

写真:Keeponが人とアイコンタクトしている様子 写真:Keeponが人と一緒にぬいぐるみを見ている様子